谷川俊太郎「シャガールと木の葉」を読んで

書評

みなさん、こんばんは。かのです。

前の投稿でもお話ししましたが、かの「詩人」としても活動しております。
そんな私が尊敬する巨匠、谷川俊太郎さん。
詩に詳しくない方でも、知らない人は居ないのではないでしょうか?
小・中学校の教科書で1度は読んだことがあるかと思います。

特に有名な作品は、教科書に掲載されていた「生きる」という詩です。
難しい言葉も使わず、気取っているわけでもない詩。
心に深く、すっと入ってくるそんな詩です。
久しぶりに読んでみて、学生の頃、この詩好きだったなあ、と思い出しました。
興味のある方は、ぜひ読み返してみてください。

今回紹介するのは、2005年に出版された詩集「シャガールと木の葉」です。
御年91歳の谷川さん。18年前なので、73歳の時ですね。
谷川さんは1948年から活動されていますので、2005年といえば、谷川さんとしてはまだまだ新しいと呼べる詩かと思います。
詩集のあとがきは簡潔で、谷川さんはあまり多くの言葉は残しておりません。
きっと独自の解釈をしても良いということですね。


一通りの詩を読んで、この詩集を閉じたときの私の率直な感想は、「心が軽くなった」「尊敬」です。

この詩集には「死」を感じさせる詩が多いと感じました。
追悼の詩もいくつか載っています。
それは当時の谷川さんのご年齢も影響しているかと思います。

「死」という本来は暗いはずのテーマが、谷川さんの詩に乗ると、何とも楽観的に見えてしまう。
心にずんと響くのではなく、す~っと入ってくる、そんな感じです。
「死」をおそれているわけでなく、受け入れている。そして、死んでいった人へ、贈り物として詩を捧げている。そんなイメージです。

「百歳になって」という詩がありました。
タマシイが、年老いたカラダを脱いで置いて行ってしまいたいというお話です。
タマシイとカラダの対話。「生きたい!」と切実に叫ぶカラダ。
何とも楽しいタッチで書かれた詩の中に、胸にすとんと落ちてくる言葉が散りばめられています。
以下、引用します。

その生きたい自分は誰なのか
カラダなのかタマシイなのか
生まれる前のことを思い出したい
ヒトの形になる前のことを

生まれる前にも自分がいたら
死んだ後にも自分はいる
「死んだら死んだでいきていくさ」
私の好きな草野心平さんの言葉です

「シャガールと木の葉」谷川俊太郎 集英社 (2005年5月10日発行)より「百歳になって」

「死」という未知のものに直面した時、きっと私はおそれると思う。そんな時、私はこの詩をまた読むと思う。しわしわになった手でこの詩集をめくると思う。
きっと70代の谷川さんだから書けた詩なんだと、尊敬の気持ちが一層強まりました。


もう一つ、この詩集のテーマがあります。
それは「星」
地球という星を題材にしている、もしくは詩の一部に「ほし」という言葉が出てくることが多かったように感じます。

その中でも、一番私の目に留まったのが「あお」という詩。
ひらがなで書かれた全文が、綺麗で繊細で、心奪われました。
壮大な自然に溶け込む「あお」
この詩を読んで「青色」が好きになったくらいに、心惹かれる詩でした。

全文がひらがななので、初めは正直、「読みにくい」なんて思ってしまったのですが、今はひらがなであることに魅力を感じます。
「青」ではなく「あお」なことで深みが出る気がします。
「あお」がただの色彩というだけではないことが伝わってきます。

心の拠りどころであり、神秘の色なのです。
なぜなら私たち人間は地球という「あおの星」の住人だから。
空の青に、海の青、物心ついたときからいつも目に飛び込んでいる色だからです。


以下、引用します。

よるのやみにほろぶあおは
あさのひかりによみがえるあお
あおのかなたにすけているいろはなにか

「シャガールと木の葉」谷川俊太郎 集英社 (2005年5月10日発行)より「あお」

この一節はなんと神秘的なことか。
この一説を読んで、富士山山頂で見た御来光を思い出しました。
夜から朝にかわっていく空の色。確かにずっと「あお」は存在し続けるのです。


濃藍から紺青になり、群青から勿忘草色になり、天色になり蒼になった。
青色を調べると、思っていた以上の種類の多さに驚きました。



「あお」が変化していくのと同時に「赤」や「橙」「黄」「白」が隙間に表れ、変化していった。その中の主役が「あお」だった。


こんなにも深く人の心に溶け込むような詩を書く、言葉を選ぶ谷川俊太郎さんは、本当に素晴らしく、偉大な詩人です。次の機会があれば、私の大好きな「朝のリレー」という谷川さんの詩を紹介できたらと思います。

「かの」こと詩人、「緑の空気」もInstagramにて詩をアップしていますので、良ければ覗いてみてください。(midori_no_kuuki)

明るい月と、少し曇りがかった空、夜の闇でさえ「あお」で、今日の夜は濃藍です。
それでは、おやすみなさい。

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